ある北西部の村 1話
一九四三年。 東欧、ハンガリー王国。 梅雨入り間近の村にある診療所にて、老齢の医師フロップと少女は対面していた。 「ハンナさん、調子はどう?」 対面する少女は三度目の診断だ。 「変わらず、寝つきはよくありません」 […]
ある北西部の村「序章」
────夢を見た。 燃えるような夕焼け空の下、小麦畑の中に立っていた。 夕日に染まった小麦畑は黄金色に輝いて、大海原のようにどこまでも広がっている。 「ハンナ、ハンナ」 耳元でそう囁く声が背後から聞こえた。 振 […]
異世界少女のラノベ作り#9
早朝の薄明るい、日の出間近のコンビニ前にて少年、木ノ前輝久春(きのまえきぐはる)と少女、ハナは友達になった。 友達になるということに形式ばった契約や堅苦しいお題目は必要ない。 友達になりたい。 感覚的にそう思った […]
異世界少女のラノベ作り#8
ぼんやりとした意識の中で誰かに声をかけられた気がした。 うっすらと目を開きながら木ノ前すみれはまた机に突っ伏したまま寝てしまったことを後悔した。 ちゃんとベッドで寝ればよかった。 腰痛のリスクを自ら高めてしまった […]
異世界少女のラノベ作り#7
小鳥のさえずりを耳に、山の向こうが白み始めた空を目に、木ノ前は駐輪場へ向かう。 自転車にまたがりいざ出発!となるところでポケットのスマホが振動する。 取り出すとSNSチャットアプリから通知が届いていた。友人だ。 ≪ […]
異世界少女のラノベ作り#6
速力を上げてわき目もふらず自転車を爆走させると、体感にして数分で自宅のある団地の駐輪場にたどり着けた。 おそらく五分もかからなかったと思う。 そして、ハッと思い出したように空を見上げると、春の夜空と煌めく無数の星が […]
異世界少女のラノベ作り#5
「天幕(てんまく)って言うのだけど、これが特別な事情」 「……!……、」 開いた口が塞がらないという言葉を体現する日が来るとは思わなかった。 非日常が過ぎて開いた口が塞がらないのだ。 夢ではない。 紛れもなく夜空 […]
異世界少女のラノベ作り#4
早く帰ろう。 帰ってジャンプを読みがらカップ麺を食べ、冷蔵庫の冷えたコーラを飲むのだ。 幸福時間(ハッピータイム)は誰にも邪魔されてはいけない。 そう固く信じて木ノ前は自転車のペダルに力を入れる。 転倒 […]
異世界少女のラノベ作り#3
乗っていた自転車に急ブレーキをかける。 少女にぶつからないように、同時に左へ急ハンドルを切った木ノ前(きのまえ)はそのまま勢いつけて横転。 地面に叩きつけられた。 「……痛ッ……!!」 強く鈍い衝撃が身体へ直 […]
異世界少女のラノベ作り#2
おのしんがどうなるか気になる。 先ほどのパーカー少年客との会話で余計に気になってしまった。 大きめの黒縁メガネをくいっと上げて少年、湯殿目牧尾(ゆどのめまきお)は深夜のコンビニで誰もお客がいないことを確認してか […]










